ベルリン

January 20, 2008

映画「善き人のためのソナタ」

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション


久しぶりにドイツ映画をDVDで鑑賞。哀しいけれど、崇高な物語です。

ソナタをはじめとする音楽の美しさも秀逸。
静かに、でもジワジワと胸に迫りくる雰囲気を持った作品だと思う。
…というか“見せる?魅せる?力”が溢れている作品なんだな。
2007年のアカデミー外国語映画賞受賞も十分うなずける秀品。

最近、ヒトラーとか今まで取り扱うことそのものがタブー視されてきたようなテーマの
ドイツ史映画が増えてきたような気がしませんか。

そういえば、今年になって私が初めて観たDVDも
ドイツ映画:「ドレスデン、運命の日」(第二次世界大戦のドレスデン爆撃のハナシ)だったわ。


さて「善き人…」の舞台は、1984年、東西の壁が崩壊する数年前の東ベルリン。
共産主義体制のもとで、冷酷なシュタージ(国家保安省)が、国民を監視しているという歪んだ世界。

血の通っていないかのような表情のない顔で
背筋も腕もピンと伸ばしきって、隙と無駄のない男、ヴィースラー。
質素な服装に質素な食事、無駄の削ぎ落とされたミニマムな世界に生きている、そのシュタージが
ある芸術家を監視する日々を通して、血の通った人間に徐々にと変化をし
やがて愛に目覚め、静かな涙を流す。
盗聴器から聴こえてきたのは
自由な発想と愛の言葉、そしてもの哀しいピアノソナタだった…というハナシ。

このヴィースラーを演じるウルリッヒ・ミューエの静かな演技が本当に素晴らしい。
盗聴をしている訳だから、彼が言葉を発することはほとんどない。
国家に忠実な大尉というキャラクター的にも
表情がくるくる変わるわけでもないし、オーバーアクションな訳でもないという中で
瞳の動きや、ちょっとしたしぐさ
暗がりの中で上官への報告書を作成するタイプライターの打ち方や、その言葉の選び方なんかで
彼の心情の移り変わりが、本当に見事に、そしてとても丁寧に表現されている。

またラストの展開の仕方も特に素晴らしいと思う。
涙がつつつつつと流れ、静かに余韻を残す映画なのです。

ソナタの美しさも然ることながら、パブやホームパーティで使っている
BGMなどのセレクトもすごく良かったなー。

それから、私が特に好きなシーンは
ヴィースラーがサッカーボールを追いかけて来た子供と一緒にエレベーターに乗り合わせるシーン。
あの金髪の男の子の、グリーンのグラデーションでまとめてある洋服と靴のコーディネートが
いかにもヨーロッパ映画なセンスを感じさせて好き。


静かに家でゆっくりしたい時に、雨の日なんかにいいかな・・・と思える映画です。


善き人のためのソナタ 公式サイト


takamaien_n at 02:25|PermalinkComments(7)TrackBack(1)